多様な連携の態様が必要な理由—単独対策の限界を超える

連携型BCPの基本的な考え方

中小企業が事業継続に関する全ての対策を単独で講じることは、資金・人材・設備の観点から限界があります。
そのため、**複数の事業者が協力し合い、相互補完的に対策を講じる「連携型BCP」**が有効とされています。
これは、事業活動の中断を防ぐために、協定を通じて支援・協力体制をあらかじめ整備しておく取り組みです。

連携の目的に応じた3つの分類

連携型BCPは、目的や関係性によって以下の3つに分類されます。
それぞれが異なる構成主体と仕組みを持ち、災害時だけでなく平時の相互支援にも寄与します。


3つの「連携の態様」とその役割

1. 組合等を通じた水平連携(Horizontal Linkage)

主体:同業種または異業種の複数の中小企業で構成される組合等。

特徴と取り組みの例:

  • 災害時の代替生産・共同復旧の実施
  • 復旧に必要な人員・設備・資材の相互融通
  • 倉庫や車両等の共有、共同備蓄の推進
  • 災害対応設備(例:自家発電設備)の共同導入と利用

ポイント:
同一地域または関連業種の中小企業が連携することで、単独では実現困難なレベルの防災体制を構築できる点にあります。


2. サプライチェーンにおける垂直連携(Vertical Linkage)

主体:原材料・部品等の需給関係にある複数の事業者(親事業者・下請中小企業など)。

特徴と取り組みの例:

  • 親事業者による下請け中小企業への普及啓発やBCP策定支援
  • 災害発生時の被害状況の共有と復旧支援の迅速化
  • サプライチェーン全体の情報共有と代替供給体制の整備

ポイント:
親事業者を中心に、**「供給の断絶を防ぐ」**視点から計画的に連携体制を構築することが重要です。
連携の範囲が広域に及ぶため、法令遵守や守秘義務への配慮も不可欠です。


3. 地域における面的連携(Area-based Linkage)

主体:工業団地・商店街など地縁的な関係を有する事業者。

特徴と取り組みの例:

  • 自治体・商工会・消防団・自治会等との協力体制構築
  • 災害時の地域復旧活動への参画
  • 地域インフラの情報共有や避難誘導の連携

ポイント:
地域密着型の連携であり、**地域全体のレジリエンス(回復力)**を高める取組みです。
地元企業が互いを支え合うことで、地域経済の早期復旧にも貢献します。


実効性のある連携のための具体的な資源共有の仕組み

共同導入・使用を必須で検討すべき設備

単独では導入が難しい防災・復旧設備を共同で整備・利用することで、コスト負担を軽減しつつ実効性を高めます。

具体的な設備例:

  • 自家発電装置(停電対策)
  • 可搬式ポンプ・浸水防止装置
  • 通信・衛星電話システム

運用上の留意点:

  • 設置費用・維持費用・管理責任を明確化
  • 使用ルールを文書化し、全構成員で共有
  • 年1回以上の点検・訓練を実施

代替生産を可能にする情報・ノウハウの共有

災害時には、代替生産によって供給を維持することが求められます。

具体策:

  • 製品設計データや製造工程情報の共有体制を構築
  • 技術情報共有時の守秘義務契約の締結
  • 代替生産に伴う費用負担や調達方法をあらかじめ協定化

ポイント:
「情報を守りながら共有する」体制を整えることで、代替生産がスムーズに行えるようになります。


連携した初動対応と情報共有

有事の際に複数事業者が有機的に連携できるよう、初動対応マニュアルと情報共有基準を定めておくことが不可欠です。

具体的内容:

  • 災害発生時の初動対応手順(避難・安否確認・報告フロー)の共有
  • 情報発信・報告のタイミングと責任者の明確化
  • 初動発動の客観的基準(震度・警報発令レベルなど)の設定

ポイント:
日頃から定期的な訓練や情報交換会を開催し、**「想定外を減らす」**ことが連携の実効性を高めます。


まとめ:3つの連携を掛け合わせ、地域と企業を守る

連携型BCPは、「水平」「垂直」「面的」という3つの連携を柔軟に組み合わせることで、

  • 災害発生時の迅速な復旧
  • 地域経済の維持
  • サプライチェーン全体の安定化
    を同時に実現します。

単独での備えに限界を感じる企業こそ、連携による事業継続力強化に取り組む意義があります。
地域全体で支え合う仕組みを整えることが、これからの中小企業経営に求められる「共助のBCP」です。

行政書士事務所 POLAIRE(ポレール)

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