BCP(事業継続力強化計画)の目的は、自然災害や重大な障害の発生時に人命の安全を最優先に守ることから始まります。
災害時には、従業員やその家族の被災、交通・通信の寸断などにより、通常の人員体制を維持することが困難になります。
そのため、まず「人を守る」ための初動対応手順を整備し、次に「人で守る」ための人員体制を強化することが、実効性あるBCPの第一歩です。
人命最優先を貫く初動体制の確立(ヒト:初期対応)
初動対応手順の決定と共有
災害発生時に混乱なく行動できるよう、避難経路や安否確認方法を事前に決定・共有しておくことが不可欠です。
- 避難経路・避難場所を社内掲示や訓練で明確化
- 従業員とその家族の安否確認手順を明文化(メール・安否確認システムなど)
- 休日・夜間など勤務外時間帯の連絡ルールを設定
これらを平時から全従業員に周知しておくことで、発災直後の判断が迅速になります。
非常時の緊急時体制の構築
- 災害対策本部の設置基準を明確にし、指揮命令系統を一本化
- 本部長・代行者・班長などの役割分担を定め、発令基準を文書化
- 緊急連絡網・非常時行動マニュアルの整備
経営者が直接リーダーシップを取り、全従業員が行動できるよう体制を構築します。
被害状況の迅速な把握と共有
- 被害報告の流れを明確化(社内→取引先→自治体等)
- 報告内容・方法・責任者を決めておく(電話・チャット・フォームなど)
- 地方公共団体・商工団体・取引先への初動報告を体系化
情報共有の遅れは事業復旧の遅れに直結します。発災直後の「誰が・何を・誰に伝えるか」を明確に定めましょう。
人員リソースの機能維持と強化:「多能工化」と相互応援態勢(ヒト:体制整備)
従業員の多能工化の実施
従業員の**多能工化(複数業務対応能力の習得)**は、BCPの基礎体力を高める最も効果的な取組です。
- 複数部署の業務を理解できるローテーション研修の実施
- 繁忙期や有事に備えたクロストレーニング
- 非常時業務マニュアルの作成と習熟テスト
特定の担当者が不在でも業務が止まらない体制を整えることが、企業全体の強靭性を支えます。
業務内容・作業手順のマニュアル化
- 各業務の手順・担当・使用書類を標準化
- 紙媒体とデジタル(クラウド)双方で保存
- 更新責任者と見直し周期(例:年1回)を明示
マニュアル化は「属人的業務」を排除し、誰でも再現できる仕組みをつくります。
相互応援態勢の構築
- 他地域の自社拠点・提携企業との応援協定を締結
- 応援派遣者の人数・職種・移動手段を明示
- 緊急時の派遣基準と連絡体制を整備
これにより、被災事業所の復旧支援を迅速に行い、**「止めない体制」**を現実のものとします。
自然災害リスクを踏まえた設備投資と資金調達(モノ・カネの戦略的確保)
モノ(設備)対策
主要設備やインフラの被害を最小限に抑えるため、事業継続力強化に資する設備投資を行います。
- 停電対策:自家発電設備・非常用バッテリーの導入
- 水害対策:止水板・排水ポンプの設置、設備の高所配置
- 地震対策:機器の固定、制震・免震装置、建物耐震化
これらの投資は単なる防災対策ではなく、「再開時間の短縮」という経営的効果をもたらします。
カネ(資金)対策
災害発生時には、売上減少や設備復旧費などによる資金ショックが発生します。
- 損害保険・火災共済への加入(休業補償・水害特約付き)
- 緊急時の運転資金調達枠の確保(銀行・公的融資制度)
- 経営改善計画・資金繰り表を活用したシミュレーション
資金面の備えがなければ、計画の実行は困難です。BCPに「資金の裏付け」を持たせることが重要です。
重要情報(データ)の保護と情報セキュリティの確立(情報)
重要情報の保護
契約書・設計図・顧客データなど、企業運営の根幹を支える情報資産は、必ずバックアップ体制を整備しておきます。
- クラウド保存・遠隔バックアップ・外部サーバーの活用
- 紙資料は耐火・耐水キャビネットで保管
- 浸水リスクを考慮した高所・別棟への保管
特に中小企業では、データ損失=取引停止につながるため、物理的・電子的両面からの対策が必須です。
サイバー攻撃対策
BCPの対象は自然災害だけではなく、サイバー攻撃や情報漏えいリスクにも及びます。
- ウイルス対策ソフト・セキュリティサービスの導入
- 在宅勤務時のVPN利用とアクセス制限の徹底
- 情報セキュリティ教育の実施(年1回以上)
「データを守ること」は、顧客と取引先の信頼を守ることに直結します。
結論:実効性を高める平時の取り組み
計画の実行と見直し
BCPは「策定して終わり」ではなく、定期的に実行・見直し・改善を繰り返すことが重要です。
訓練結果や環境変化を反映させることで、常に“生きた計画”として機能します。
推進体制の整備と訓練の実施
経営者が主導し、従業員全員が理解・行動できるようにするため、
- 平時の推進会議の設置
- 年1回以上の訓練と教育の実施
- 改善提案制度による現場の声の反映
これにより、BCPが組織文化として根づき、実行力が高まります。
継続的な改善
経営環境・人員構成・取引先状況が変化するたびに、BCPも更新が必要です。
PDCAサイクルを意識し、毎年の見直し・再教育・改善を行うことで、企業の強靭性が確実に高まります。
行政書士事務所 POLAIRE(ポレール)
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