事業継続力強化(BCP)は、単に計画書を作ることが目的ではありません。
自然災害等が発生したときに、実際に動くかどうかがすべてです。
そのためには、
- 経営層による明確なコミットメント
- 平時からの推進体制の整備
- 訓練・教育・見直しの継続実施
が欠かせません。BCPを「特別なプロジェクト」ではなく、日常のマネジメントの一部=組織文化として根づかせることが求められます。
経営者による主導的な役割の明確化
トップマネジメントのコミットメント
事業継続力強化の実効性を確保するためには、経営者(またはそれに準ずる者)が主導的な役割を担うことが前提条件です。
「BCPは総務任せ」「現場任せ」という状態では、いざという時に組織は動きません。
経営者自らが、
- BCPの重要性を繰り返し発信する
- 目標や優先順位を明確に示す
- 必要な人員・予算をコミットする
ことで、全社的な取組へと格上げされます。
指揮体制の構築と会議体の活用
具体的には、経営層の指揮のもとで平時の推進体制を整備することが考えられます。
- BCP推進責任者(多くは代表取締役)を明確化
- 管理職全員で構成する会議体(経営会議など)でBCPを継続的議題にする
- 既存の委員会(例:工程安全管理委員会)に「災害対策・事業継続」を追加議題として組み込む
こうした枠組みを整えることで、BCPは「一時的なプロジェクト」ではなく、通常の経営管理サイクルの一部として扱われるようになります。
実効性を担保する「平時の推進体制」の整備
推進体制整備の目的
自然災害等の発生を視野に入れた平時の推進体制の整備は、BCPの実効性を確保するための中核的な取り組みです。
この体制が機能すると、次のサイクルが組織に定着します。
- 計画の策定・更新
- 訓練・教育の企画と実施
- 訓練結果や経営環境の変化に応じた見直し
単発の取り組みではなく、「続けていく仕組み」をつくることが目的です。
推進体制によるBCPの推進と定着
平時の推進体制では、例えば次のような役割分担が想定されます。
- 代表取締役:全体方針の決定、重要事項の承認、対外的な説明
- BCP推進責任者(役員等):計画策定・訓練・見直しの統括
- 各部門長:部門ごとの具体的な初動対応・代替業務手順の整備
- 事務局(総務・管理部門等):文書管理、訓練記録、認定申請の実務対応
このように、代表取締役の指揮の下で推進体制が動く構図を明確にしておくことで、有事における指揮命令系統も自動的に整理されます。
体制による継続的改善と組織全体への浸透
訓練・教育と見直しを結びつける
推進体制は、「訓練をやるかどうか」ではなく、
訓練をどう評価し、どう計画に反映するかまでを担います。
- 年に一度以上の訓練・教育の実施
- 訓練実施後の振り返り(課題・改善点の整理)
- 改善内容をBCP本体やマニュアルに反映
この一連の流れが明文化されていれば、訓練は単なる行事ではなく、BCPを磨き込むための重要なインプットになります。
全社的な情報共有の仕組み
推進体制を通じて、
- 自然災害等が事業活動に与える影響
- 災害時の対応手順・役割分担
などを、一部の担当者だけでなく全従業員に広く共有することが求められます。
具体的には、
- 社内イントラ・掲示板・説明会での周知
- 新入社員研修や管理職研修へのBCPモジュール組込み
- 訓練の結果報告を社内にフィードバック
といった形で、「社内の共通知識」として定着させていきます。
PDCAサイクルとフォローアップ実務(定期的な見直しと2回目以降の認定)
定期的な見直しによるBCPの鮮度維持
BCPの有効性を保つためには、**定期的な見直し(Planの更新)**が不可欠です。
見直しの主なトリガーは次のとおりです。
- 訓練で判明した問題点
- 事業内容・拠点・人員構成の変化
- 取引先構成やサプライチェーンの変更
- 自然災害リスク(ハザードマップ)の更新
推進体制の会議で、少なくとも年1回は計画全体の棚卸しを行い、必要に応じて修正・更新を加えます。
2回目以降の認定申請と「実施状況報告」
BCP認定は一度取得して終わりではなく、
2回目以降の認定申請で「実施状況」を問われるフェーズに入ります。
推進体制として意識すべきポイントは、次のとおりです。
- 訓練実施回数・内容・参加人数の記録を残す
- 訓練結果に基づき、どのような見直しを行ったかを整理しておく
- 設備導入や体制強化など、計画に定めた取組みの実施状況を把握する
これらはそのまま、**認定の継続・更新における「実行している証拠」**になります。
推進体制が中心となって、記録・報告・見直しを一体的に管理することで、2回目以降の認定申請もスムーズに進められます。
組織の継続的な強靭化に向けて
BCPを「組織文化」として定着させるためには、次の3点が不可欠です。
- 経営層の強力なリーダーシップ
- 平時から機能する推進体制の確立
- 訓練・教育・見直し・認定更新を通じたPDCAサイクルの定着
この推進体制のもとで、BCPが単なる文書ではなく、
**緊急時に全従業員が適切に動けるための「生きた仕組み」**へと育っていきます。
結果として、
- 有事の被害を最小化し、
- 平時の経営管理レベルも向上し、
- 取引先・金融機関・従業員からの信頼も高まる。
BCPは、防災対策であると同時に、組織そのものを強くするマネジメントツールと言えるでしょう。
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