BCP(事業継続力強化計画)において、情報の保護は「ヒト・モノ・カネ・情報」の四大要素の一つとして欠かせません。
売上帳、契約書、設計図、顧客データなどの重要情報が失われれば、事業の再開どころか取引の継続自体が不可能になることもあります。
また、近年は自然災害だけでなく、ランサムウェア(身代金型ウイルス)などのサイバー攻撃による情報漏えいやシステム停止のリスクも高まっています。
このような複合的な脅威に対応するためには、情報資産を物理的・論理的の両面から保護する体制を、平時から整えておくことが重要です。
自然災害から重要情報を守る具体的な対策(データの物理的・論理的保護)
データの複製化とバックアップ
自然災害による紛失・滅失を防ぐためには、情報の電子化と定期的なバックアップが基本です。
- 紙の帳簿・契約書はスキャンして電子化
- サーバー内データは毎日自動バックアップ
- バックアップ履歴を複数世代(例:過去30日分)で保持
この「複製化」により、1拠点が被災しても業務再開が容易になります。
分散保管の徹底
バックアップデータを同一建物や近隣施設に保管している場合、同時被災の恐れがあります。
- クラウドサーバーや遠隔地データセンターを活用し、地域リスクを分散
- データの暗号化とアクセス制限を徹底
物理的距離の確保が、リスク回避の鍵です。
物理的な保護対策
データ媒体やサーバーそのものを守ることも重要です。
- サーバー・電源設備は浸水しない高所へ設置
- 免震装置や耐震ラックを導入し、地震対策を実施
- 紙資料は耐火・耐水キャビネットで保管
設備の設置位置と環境整備が、災害時の被害軽減につながります。
情報の活用継続への配慮
クラウド保存を採用していても、停電時にアクセスできなければ意味がありません。
- **自家発電設備やUPS(無停電電源装置)**の導入
- 重要データへのオフラインアクセス権限を限定的に付与
「保護」と「利用可能性」を両立させる設計が不可欠です。
サイバー攻撃リスクへの対応とセキュリティ体制の確立
リスクの認識と対策の導入
サイバー攻撃は「災害に起因しない新たな事業停止リスク」として位置づけられます。
特に中小企業では、セキュリティ投資の不足から被害拡大につながる例も少なくありません。
情報セキュリティ体制をBCPの一部として明文化し、全社で取り組む必要があります。
防御システムの導入
サイバー攻撃からシステムを守るための多層防御を構築します。
- ウイルス対策ソフト・ファイアウォールの導入
- 不正侵入検知(IDS/IPS)・監視システムの設置
- 「サイバーセキュリティお助け隊」などの外部セキュリティサービス活用
中小企業こそ、専門事業者の支援を受けることが効果的です。
認証と規程の整備
- **多要素認証(パスワード+指紋・SMSコード等)**を導入し、不正アクセスを防止
- クラウドサービスは、セキュリティ基準(ISO27001等)を満たすものを選定
- 「情報セキュリティ対策ガイドライン」(経済産業省)を参考に社内規程を策定
これにより、「人」「仕組み」「ルール」の三位一体で守る体制が整います。
平時からの情報セキュリティ管理と在宅勤務対策
リモートワーク環境下での情報漏えい防止
在宅勤務の普及により、オフィス外での情報漏えいリスクが拡大しています。
- 業務データの私用端末保存を禁止
- VPN接続・リモートデスクトップの利用を義務化
- 自宅のWi-Fi暗号化設定(WPA2以上)を徹底
従業員一人ひとりの意識と環境整備が、安全性を左右します。
環境整備と機器管理
- 業務端末のセキュリティ設定を統一(パスワード強度・自動ロック)
- OS・ソフトウェアを常に最新バージョンに更新
- 紛失・盗難時に遠隔初期化できる管理システムの導入
「どこで働いても安全」を実現するための仕組みづくりが求められます。
情報の適切な管理
- 社内外で扱うデータの分類(極秘・社外秘・一般)
- 持ち出し・共有の権限管理
- 情報廃棄時の手順明文化(紙資料の溶解・データ消去)
日常業務でのルール徹底こそが、最も効果的なセキュリティ対策です。
結論:情報セキュリティの継続的な改善
重要情報の保護は、BCPの柱の一つとして経営課題レベルで取り組むべき事項です。
サイバー攻撃や自然災害に対して完璧な防御は存在しませんが、被害を最小化する準備は可能です。
- 年1回以上の**社内訓練(模擬攻撃・障害対応)**を実施
- 計画・規程・体制を定期的に見直し、改善を繰り返す
- 経営層自らがリーダーシップを持ち、全社員の意識向上を図る
BCPは“守るための計画”であると同時に、“信頼を積み重ねる経営ツール”です。
情報を守る企業は、信頼も守る企業——その姿勢が継続の力となります。
行政書士事務所 POLAIRE(ポレール)
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