BCP(事業継続力強化計画)の最終目的は、自然災害などの危機的状況においても事業活動を継続または早期復旧することです。
そのためには、「ヒト(人的資源)」だけでなく、**モノ(設備)とカネ(資金)**の脆弱性に備えることが欠かせません。
災害が発生した際、建物や機械の損壊、電力・水道などのインフラ停止により、通常の業務を維持することは困難になります。
また、復旧期間中も固定費や給与支払いは継続するため、資金の確保が不可欠です。
したがって、設備投資と資金対策を戦略的に組み合わせることが、実効性あるBCPを実現する基盤となります。
自然災害リスクを踏まえた設備投資(モノ)の戦略
目的と有効性
自然災害による事業中断を防ぐためには、主要設備の損壊防止と早期復旧を両立させる設備投資が重要です。
単なる防災設備の導入にとどまらず、日常の生産性向上や省エネ対策と組み合わせることで、経営的な効果も期待できます。
具体的な対策事例(リスク別)
停電対策
- 自家発電設備の導入:停電時の生産停止を防ぎ、最低限の稼働を確保する。
- 発電設備・排水ポンプの高所設置:浸水リスクを想定し、設備の位置を見直す。
- 燃料備蓄:稼働継続に必要な燃料量を平時から確保しておく。
これらの対策は、地域全体の停電時にも早期復旧を実現する重要な要素です。
水害対策
- 止水板や排水ポンプの導入:浸水の防止と排水能力の強化を両立。
- 高所設置・高台移転:重要設備や変電盤を高所に設置、津波想定地域では高台移転を検討。
- 排水経路の定期点検:排水ルートの詰まりを防ぎ、排水効率を維持。
地域のハザードマップを確認し、自社拠点の立地リスクに応じた設備対策を検討することが求められます。
地震対策
- 機器の固定:転倒・落下防止のための固定具や耐震ベルトを設置。
- 耐震補強・制震装置の導入:建物の構造強化とともに、精密機器の損壊を防止。
- 免震台の活用:サーバーや工作機械などの振動被害を軽減。
こうした備えは、被害の最小化だけでなく「事業再開のスピード」を左右します。
投資の検討基準
設備投資は、リスクと費用のバランスを踏まえて戦略的に実施する必要があります。
検討の際には次の視点が有効です。
- 想定される災害リスクの種類と発生確率
- 自社のサプライチェーン上の重要度(主要製品や取引先への影響)
- 設備の耐用年数と投資回収期間
- 国・自治体の補助金・税制優遇の活用可能性
設備導入は、単なるコストではなく、**「経営を守るための投資」**として位置づけましょう。
事業継続を支える資金調達(カネ)の戦略的確保
資金確保の必須性
災害時には、建物や設備の修繕費だけでなく、次のような固定費支出が継続します。
- 従業員の給与
- 賃料・リース料
- 光熱費・通信費
- 取引先への支払義務
こうした支出を滞りなく継続できるかが、企業の信用と再建スピードを左右します。
したがって、**事前の資金計画=「事業継続の生命線」**といえます。
具体的な資金繰り対策(リスクファイナンス対策)
保険・共済の活用
- 損害保険や火災共済への加入により、被害後の修繕費・休業損失を補填。
- 水害補償や休業補償保険の有無を確認し、不足部分を補う保険を組み合わせる。
- 事業用不動産・機械設備には、地震保険・動産総合保険の加入を検討。
保険は“最後の砦”であり、補償範囲と上限額を精査することが実効的なリスクファイナンスにつながります。
補償内容の確認と定期見直し
- 保険・共済の補償条件(免責額・支払い上限)を定期的に確認。
- 事業規模拡大や設備更新に応じて補償額を見直す。
- 災害リスクが高まる地域では、地震・水害対応特約の追加を検討。
見直しを怠ると、被害発生時に補償が不十分となるケースがあります。
緊急融資の準備
- 金融機関との関係強化により、平時から融資枠を確保しておく。
- 政府系金融機関(日本政策金融公庫など)の災害復旧融資制度を確認。
- 信用保証協会による特別保証枠制度を把握しておく。
資金繰り対策は「契約書を見直す」だけでなく、「つながりをつくる」活動として継続的に行うことが重要です。
自己資金の確保
- 売上の一定割合をBCP対応予備資金として積立てる。
- 年次利益計画に「非常時対応資金枠」を明確化。
- 内部留保・短期運用資産を活用した即時対応能力を強化。
災害時にすぐ使える資金を確保しておくことで、緊急対応のスピードが飛躍的に向上します。
結論:実効性を高める総合的な計画
設備(モノ)の強化と資金(カネ)の確保は、BCPの中核を支える両輪です。
設備を守り、資金を確保することは、単なる災害対策ではなく、
「事業を止めないための経営戦略」と位置づけるべきです。
その実効性を高めるためには、
- 自社のリスク認識を定期的に見直すこと
- 対策の優先順位を明確にすること
- 補助金・支援制度の活用を検討すること
が重要です。
“守りの投資”が“攻めの経営”を支える。
これが、BCPの本来の意義といえるでしょう。
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