BCPを陳腐化させないための運用サイクル

事業継続計画(BCP)に関する研修を受ける職員の様子を、抽象的なイメージで表したもの。 実務運用とフォローアップ

事業継続力強化計画(BCP)は、自然災害等が発生した際に事業を継続・早期復旧するための「設計図」です。
しかし、一度策定しただけでは、時間の経過とともに事業実態と計画内容が乖離し、陳腐化してしまいます。

そのため、BCPには次の2つが不可欠です。

  • 計画期間を通じた定期的な見直し(運用)
  • 計画期間満了時の更新申請と実施状況報告(フォローアップ)

これらを組み合わせて、BCPを常に最新の状態に保つことが求められます。


計画の有効期間と「定期的な見直し」の必要性

計画期間は「最長3年」

事業継続力強化計画の期間は、最長3年以内とされています。
これは、3年以上経過すると、

  • 設備・人員構成
  • 取引先やサプライチェーン
  • 自然災害リスク(ハザードマップの改定等)
    といった前提条件が大きく変化しやすいためです。

定期的な見直しの重要性

計画の有効性を保つためには、
自社の経営環境の変化や訓練の実施状況等を踏まえ、定期的に計画を見直すことが求められています。

  • 年に一度以上の訓練の結果を踏まえた改善
  • 新規事業・新拠点の追加に伴うリスク評価の更新
  • 防災・減災投資(自家発電設備、止水板など)の導入状況の反映

これらは、単に「計画どおりできているか」の確認にとどまらず、
**「計画そのものを今の実態に合わせてアップデートする」**作業です。

随時の見直し(緊急見直し)の必要性

また、状況の変化が大きい場合には、3年を待たずに随時見直しを行う必要があります。

例えば、

  • 主要工場の移転や新設
  • 重要取引先の変更や集約
  • 地域の災害リスク情報(ハザードマップ)が更新された場合

こうした変化が生じた場合は、計画の実施期間満了を待たずに、BCPの見直しを検討することが望まれます。


計画更新時(2回目以降の申請)と「実施状況報告」の実務

「新規申請(2回目以降)」の選択

既にBCPの認定を受けており、その実施期間が満了した後、再度認定を受けたい場合には、
電子申請システム上で**「新規申請(2回目以降)」**を選択します。

これは単なる「更新」ではなく、
新たな計画として申請するが、前回計画の実施状況を報告する必要があるという位置付けです。

実施状況報告の役割

2回目以降の申請では、直近の計画に関する**「実施状況報告書」**の提出が求められます。

報告では、

  • 前回計画期間中に何を実施したか
  • その取組がどの程度進捗したか(◎、○、△、×)
  • 現時点の状況と課題、今後の改善方針

などを自己評価として記載します。

国は、事業者によるこうした自己評価を通じて、
「実際にBCPが運用されているかどうか」を確認することを想定しており、
計画の作成だけでなく、その後の運用状況も重視しています。


実施状況報告における「評価(◎○△×)」と記載のポイント

特に実務で悩みがちなのが、評価を△や×とした場合の書き方です。
ここでは、実施状況報告書の評価欄を記載する際のポイントを具体的に整理します。

評価記号の基本的な考え方(例)

  • ◎:計画どおり実施し、成果が十分に得られている
  • ○:概ね計画どおり実施したが、一部課題が残っている
  • △:一部は実施したが、計画どおりには進んでいない
  • ×:実施できていない、または着手できていない

重要なのは、「◎を並べること」ではなく、
実態に即した評価と、改善に向けた姿勢を示すことです。

△や×とした場合の書き方(基本構成)

△や×の評価を付ける場合、次の3点をセットで書くと読み手に伝わりやすくなります。

  1. なぜ計画どおり実施できなかったのか(理由)
  2. 現時点でどこまで進んでいるのか(状況・進捗)
  3. 今後どのように改善するのか(具体的な改善方針・期限)

記載例①:訓練の実施状況(評価:△)

【評価:△】
年1回の全社訓練実施を計画していたが、計画期間中に実施できたのは2年間で各1回のみであり、1年は新工場立ち上げに伴う人員入替の影響で延期した。
現時点では、本社・工場単位で避難訓練と初動対応の確認は一部実施しているが、全従業員を対象とした訓練までは至っていない。
今後は、新年度の事業計画と連動させて訓練日程を前倒しで確定し、年1回以上の全社訓練を計画的に実施する。また、訓練結果を踏まえたマニュアルの改訂を毎年度末に行う。

記載例②:設備投資の実施状況(評価:×)

【評価:×】
自家発電設備の導入を計画していたが、原材料価格高騰と設備更新費用の増加により、計画期間中の導入に着手できなかった。
現在は、停電時の最低限の照明・通信を確保するため、既存のポータブル電源を複数台追加配備して対応している。
今後は、資金計画を再検討のうえ、次期計画期間中にリース方式等を活用した段階的な設備導入を検討する。また、導入までの間は、停電時の業務継続を前提とした代替手順の整備を行う。

このように、「できなかった」という事実だけで終わらせず、「なぜ・いまどうか・これからどうするか」を一体で示すことが重要です。


実務運用におけるフォローアップ支援の活用

現場担当者にかかる負担

BCPの継続運用は、現場担当者にとって次のような負担を伴います。

  • 「年に一度以上」の訓練を、実践的かつ効果的に企画・実施する
  • 訓練の記録を残し、改善点を整理する
  • 3年ごとの計画期間満了時に、実施状況報告書を作成する
  • 次期計画(2回目以降の申請)の内容を、実態に合わせて組み立てる

特に中小企業では、BCP担当者が他の業務と兼務している場合が多く、「やりたいが回らない」という声も少なくありません。

専門家によるサポートの意義

こうした負担を軽減し、BCPの継続運用を止めないために、外部専門家の活用は有効です。

例えば、

  • 訓練・教育の企画とファシリテーション
  • 実施状況報告書の書き方支援・内容レビュー
  • 次期計画(2回目以降申請)のドラフト作成
  • 税制優遇・金融支援との一体的な見直し提案

など、BCPの「策定 → 運用 → 見直し → 再認定」までを一貫してサポートすることで、
企業側は本業に専念しつつ、事業継続力の底上げを図ることができます。


結論:BCPの継続運用は企業の責務

BCPは、一度作れば終わりの「書類」ではありません。

  • 定期的な見直し
  • 実施状況報告による自己評価
  • 2回目以降の認定申請によるアップデート

といった継続的な運用とフォローアップを通じて、
初めて緊急時に真価を発揮する「生きた仕組み」になります。

経営層の指揮のもとで平時の推進体制を確立し、

  • 訓練・教育の実施
  • 定期的な見直し
  • 正確かつ具体的な実施状況報告

を着実に積み重ねることが、
認定の維持と事業継続の実効性を確保するうえで、企業の重要な責務といえるでしょう。

行政書士事務所 POLAIRE(ポレール)

お問い合わせ先
TEL:096-288-2679
FAX:096-288-2798
MAIL:polaire@sp-pallet.net
※3営業日以内にご連絡差し上げます。


営業時間(完全予約制)
火・水・金・土:10:00~19:00
月・木:10:00~12:00
※日曜・祝日は休業日です。
※お電話でのご相談は行っておりません。
※ご依頼内容により必要な手続きが異なるため、「金額だけ」をお伝えすることはできません。必ず対面またはオンラインでお話を伺ったうえで、お見積りをご提示いたします。


夜間オンライン相談(完全予約制)
毎週水・金曜日:20:00~21:00(オンライン対応のみ)
※日中にお時間が取れない方のための予約制相談です。
ご予約完了後、オンラインミーティングのURLをお送りします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました